【片麻痺】運動麻痺の高度な治療技術~〈プレーシング〉について~

脳卒中

こんにちは。
作業療法士のブログ、ふじいろブログです。

運動麻痺の治療手段に、非常に高度な技術、〈プレーシング〉(Pracing Response)があります。

〈プレーシング〉は世界中で支持されているリハビリテーション手技、ボバース療法で用いられる技術の一つです。

その習得は難しいもので、著名で実力のあるリハビリの先生方が日々修練を積み、実践されているというものでもあります。

今回は〈プレーシング〉という技術についての紹介が主ですが、後半で片麻痺の方の身体管理、自主トレに役立つ内容をお伝えします。

正直、僕ごときが〈プレーシング〉について語って良いのかという気負いもあります。

しかしこの技術の素晴らしさを片麻痺の人や新人セラピスト、一般の方々にどうにか分かりやすい形で伝えられたら意義があると思い、僭越ながらブログ記事を作成しました。

是非ご一読下さい。

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〈プレーシング〉とは?

プレーシング〉は、セラピストが患者さんの身体の動きを誘導する技術です。

その誘導は上手く行けば、セラピストが手を空中で離しても、患者さんは誘導されていた手足をそのまま上げた姿勢で止めてくれたりします。

手を空中で留める
新人セラピスト
新人セラピスト

これは怪しい宗教か、もしくは洗脳の類ですか?

最初、教わった時は僕もそう思いました。

しかし経験年数を重ねる毎に、これは人間には当たり前に起こる現象だと理解しました。

人間は身体を誘導されれば、無意識に反応して動いてしまうものなのです。

手を上げて行く誘導

リハビリ場面 手を上げる

例えば患者さんに手を上げてもらう際に、セラピストがただ患者さんの手を引っ張ったり持ち上げるだけでは、患者さんは自分の力で動いていない状態となります。

しかし、セラピストが患者さんの指先を手で軽く包む様に握り、動いて欲しい方向を伝える様に上に誘導して行くと、患者さんは誘導に合わせて、自分の筋肉を働かせて一緒に手を上げてくれるのです。

しかし、簡単ではない

これは実際にやってみるとそう簡単ではありません。

人それぞれ動き安い方向やタイミングがあり、セラピストが接触する部位などによっても、反応のしやすさは変わります。

手を上げていくという誘導についても患者さん一人一人個人差があり、一様ではありません。

その為、〈プレーシング〉の習得への道は険しく、より良い誘導方法の可能性は限りなくあり、修練は終わらないものと言えます。

口で伝えるだけでは上手く動けない

片麻痺の人は言葉で「手を上げて、肘を伸ばして」と伝えられて動いても、身体の捻れや過緊張を伴います。

これを代償動作と言います。

言葉で聴いて、患者さん一人の力で動く中では、自分の中にある身体の動かし方、代償パターンで動いてしまいます。

しかしセラピストが触りながら誘導して行くと、その刺激を切っ掛けに身体を働かす為、代償パターンではない動きを引き出せます。

そして、誘導する中で正常な運動に近づけて行く事が出来るのです。

〈プレーシング〉の原則

基底面につなぐ

身体を支える面を基底面(立っていれば足の裏、座れば両足と座面)と言いますが、人間は基底面を土台にして運動を行います。

その為、常に〈プレーシング〉は基底面に患者さんの身体が上手く乗るようにしながら、行わなくては行けません。

例えば手を上げていく場面でも、誘導するセラピストは指先から少し基底面に身体を押す様な力を加わえながら行う事があります。

手から基底面までつなぐイメージ

そうする事で患者さんは基底面から手の先まで筋肉の働きが繋がった状態で反応して動く事ができます。

〈プレーシング〉は全身反応である

例えば手を上げていく運動の中では、

背すじは伸びて行く。

上げていく手の側の脇の下は開いていく。

それに合わせてお腹は伸びる、重心が少し移動する。

足では、手を高く上げる為の踏み込みが起こる。

などの全身の運動が伴います。

上記の動きは厳密にはタイミングに僅かなズレがありますが、しかし一瞬の内に同時的に起こります。

セラピストは〈プレーシング〉を行う時、手を動かす事ばかりに気をとられては行けません。

全身を誘導していく」という意識が必要です。

もし誘導中に患者さんの姿勢(接触している所以外の他の身体部位)が強く捻れる様な事があれば、それは誘導が適切ではないと言えます。

道具の先の感覚が〈プレーシング〉になる

筆で字を書く

ここから少し、片麻痺の人の自主トレに繋がる話しをします。

作業療法では麻痺側の手で字を書くことがあります。

患者さんが字を書く中で「腕を動かそう、力を入れなくては」と頑張っている時は、肩は上がり、肘は曲がって外側に張り出てきます。手首は固くなります。

しかし、文字の「止め」や「伸び」を書く等、繊細なコントロールをする時に、全身の姿勢が整い、手の動きがスムーズになる事があります。

鉛筆の先の黒鉛が削れて、文字の濃淡が変化する。
・筆であれば筆先から墨汁が半紙に染み込んでいく感覚。

その感覚を感じとる為には、手首・肘・肩は整った姿勢で、柔らかい状態になる必要があります。

そして全身の姿勢にも影響していきます。

道具の先を感じとろうとする時、その感覚が〈プレーシング〉になる事があるのです。

この様に文字を書くという場面の中でも、その作業活動が熟練したリハビリ士の技に匹敵するリハビリになる可能性があります。

片麻痺の人は、どの様な感覚刺激が自分の身体の緊張を解いて姿勢を良くするのか、生活の中で模索していく事が良いリハビリになるのではないでしょうか。

何か作業をやった後、「身体が軽くなった」「動きがスムーズに感じる」というものがあれば、それは自主トレに取り入れて行くべきでしょう。

希望の光を感じる絵 作者:カッちゃん

今回はプレーシングというリハビリの技術について紹介しました。

今まで知らなかったという人は、浮世離れした話の様に感じたのではないでしょうか。

しかし身体の回復の可能性はまだまだありそうだと、片麻痺の人にとって希望に繋がる内容となったのなら、嬉しく思います。

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